ビタミンDって結局なに?
もうちょっとシンプルにビタミンDのこと説明してよ。
結局どうすればビタミンDの効果を得られるの?
こう思っている方は意外と多いのではないでしょうか。
とはいえ雑誌の特集記事を読んでもいまいちピンと来ないし、本屋で健康本を立ち読みしても途中で飽きちゃいますよね。
この記事では現役内科医の観点からビタミンDの効果についてシンプルに解説いたします。
肩の力を抜いて「ほー、こんな作用があるんだ」と思っていただければそれだけで幸せです。
記事を読み終えるころにはきっとビタミンDを意識した生活になっていると思います。
ぜひご一読を。
・ビタミンDのはたらき
・ビタミンDの濃度を上げる具体的な方法
ビタミンDのはたらき
ビタミンDのはたらきを挙げれば正直キリがありません。
中にはまだ効果が証明されていないものや実は全く効果のないものもあります。
全て挙げると頭が混乱するので、ここではシンプルに今おさえておきたいポイントだけお話しをします。
骨を作る
ビタミンDの代表的なはたらきとして「骨を作る」作用が挙げられます。
小腸や腎臓でカルシウムを吸収することで、骨を作り成長を促します。
ビタミンDが不足すると骨がもろくなって骨粗鬆症という病気になる可能性が上がります。
特に閉経後の女性に多くみられ、定期的に薬を飲んでいる方も多くみえます。
骨粗鬆症の患者さんの中には、骨を丈夫にしようとカルシウムを多く含む食品を摂る方がよくいます。
たしかにカルシウムを摂ることはとてもいいことですが、ビタミンDが不足した状態では効率的に骨を作ることができません。
ですので骨を強くしたいのならカルシウムだけではなく、ビタミンDも同時に摂取する必要があります。
<参考文献>
▷骨の健康にはビタミンDが関連している。
Summary of evidence-based review on vitamin D efficacy and safety in relation to bone health
Am J Clin Nutr.2008 Aug;88(2):513S-519S
免疫力を上げる
もう1つビタミンDの働きとして今注目の効果があります。
それは「免疫力を上げる」効果です。
ビタミンDの免疫効果を示す論文は以前からもいくつも認められています。
▷ビタミンDを摂取させた子供のインフルエンザ罹患リスクが低下した
Randomized trial of vitamin D supplementation to prevent seasonal influenza A in schoolchildren
Am J Clin Nutr. 2010 May;91(5):1255-60
▷ビタミンDサプリを服用すると急性上気道炎(風邪)の罹患リスクが低下した
Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory infections: individual participant data meta-analysis
Health Technol Assess. 2019 Jan;23(2):1-44
これらの結果からビタミンDがインフルエンザウイルスなどを含めた急性上気道炎(風邪)に対する免疫効果があることが示唆されてきました。
そして新型コロナウイルスが蔓延する今、ビタミンDがその感染リスクや重症化を抑えるのではないかと期待されています。
時のアメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプも新型コロナウイルス罹患時にビタミンDの補充をしたとの噂があります。
▷ビタミンDの補充がインフルエンザや新型コロナウイルスの罹患リスクや死亡率を下げる可能性がある。
Evidence that Vitamin D Supplementation Could Reduce Risk of Influenza and COVID-19 Infections and Deaths
Nutrients. 2020 Apr 2;12(4):988
ビタミンDがどのようなメカニズムで免疫効果を示すかははっきりとはわかっていませんが
・炎症性サイトカイン(炎症を過剰に起こす物質)を抑える効果
・ウイルスの複製を低下させるタンパクを誘導する
・肺の上皮細胞にビタミンD受容体があり炎症に関与している?
などが推察されています。
新型コロナウイルス感染症に対するビタミンDの有効性に関しては、まだはっきりとした結果は得られていません。
しかし複数の報告があるように、一定の効果は得られるのではないかと考えられます。
その他
その他にもビタミンDにはがんや認知症、うつ病を抑える効果が期待されています。
個人的には骨の形成と免疫アップを知っていればもうビタミンD博士になれるかと思います。
ビタミンDのその他の効果に関しては別の記事で紹介をさせていただきます。
実は医学部の講義でビタミンDについて深く学ぶのは「骨の形成」までです。医師の中には免疫力との関係についてあまり知らない方が多いのも事実です。
ビタミンDの濃度をあげる方法
「ビタミンDが重要なのはわかったけど、じゃあ具体的にどう摂取すればいいのか?」
ビタミンDの濃度を上げる方法は2つあります。
・日光を浴びる
・食事、サプリメントから摂取する
日光を浴びる
一般的にはビタミンは人間の体の中では作ることはできません。
しかしビタミンDはホルモンとしての作用でも知られ、日光にあたることで体内で合成することができます。
どれくらいの時間日光に当たればいいかは、地域や天気によって大きく異なります。
ここに日本での研究データがあります。
▷5.5μgのビタミンD量を産生するために必要な日照暴露時間を札幌、つくば、那覇で計測した研究
The solar exposure time required for vitamin D3 synthesis in the human body estimated by numerical simulation and observation in Japan
J Nutr Sci Vitaminol 2013;59:257-63
参考)厚生労働省からのWeb公開されている日本人の食事摂取基準(2020)に、日本語訳の表が記載されているので興味がある方はぜひご覧ください。(181ページ)
この5.5μg(220IU)というのは、つい最近まで厚生労働省がビタミンDの1日摂取推奨量として掲げていた数字です。注)現在は2020年に8.5μg(340IU)まで引き上げられております。
この研究結果では、たとえば12月の札幌では正午の時間帯で5.5μgのビタミンDを合成するのに76.4分必要になります。
7月の那覇が2.9分なので、季節や地域によって大きく異なるのがわかりますよね。
今の季節で考えると、12月のつくば市(茨城県)では正午で22.4分必要という結果でしたので、本州の方は1日20分は太陽光を浴びる必要があることが推察されます。
コロナ禍で外出する機会が減り、日光に当たる時間が短くなった日本人はビタミンDが不足している可能性が高いです。
密を避けつつ、日中は日に当たることでビタミンDの血中濃度を上げることができます。
食事、サプリメントから摂取する
ビタミンDは食品から摂取することができます。
どのようなものがビタミンDを豊富に含むのでしょう。
・キクラゲやしいたけといったキノコ類や海藻類などの植物性食品
・魚、鶏卵、レバーなどの動物性食品
ビタミンDの血中濃度を上げたい方は、こういった食品を意識して取るのもアリだと思います。
しかし食事から得られるビタミンDには限界があります。
厚生労働省が示す我が国のビタミンD摂取推奨量は1日8.5μg(340IU)です。
一方日本人のビタミンD平均摂取量は7.3μg(292IU)と言われています。
つまりビタミンDは摂取量だけでもすでに不足しており、毎日キノコや魚を摂るにはかなり意識を高める必要があります。
さらに加えて日照暴露時間も減っていることを考えると、やはりビタミンD不足が心配です。
そこで1つ考えたいのがビタミンDサプリメントの摂取です。
アメリカ合衆国のビタミンD摂取推奨量は1日15μg(600IU)と設定されています。
そもそも体格も人種も違うから摂取推奨量に違いがあるのは当たり前だと思うかもしれませんが、ビタミンDの効果が認められる論文の多くは、1日800-1000IU/日ほどの用量が投与されています。
そして体格の違う日本人もアメリカ人も摂取の上限は100μg(4000IU)とされています。
こういった情報からも1日1000IU程度のサプリメントを摂取することは、比較的安全で効果も得られるのではないかと考えられます。
まとめ
それでは本日のまとめです。
・まずはビタミンDの「骨の形成」と「免疫力」をおさえるべし。
・冬場は1日に20分は太陽の光を浴びる
・1日1000IUのサプリメントを摂取することで一定の効果は得られるだろう
新型コロナウイルスが今現在も増加しております。
感染予防策をどれだけ行っていたとしても、残念ながら感染する可能性は誰にでもあります。
自分の免疫力を上げることも1つの選択肢かもしれません。